社会保険労務士の渋谷区の高山英哲です!

こんにちは。

真宗大谷派本山の東本願寺(京都市下京区)で、働く僧侶に残業代を支給していなかったことがわかりました。

残業代を支給していなかった理由は、「時間外割増賃金は支給しない」との覚書を労働者代表と交わしていたからといわれています。

従業員である僧侶に時間外労働、深夜労働、または休日労働をさせる場合には、寺側は割増賃金を支払う必要があります。

僧侶にかぎらず、長時間労働が慣行化している事業所では残業代を支払った場合、経営が維持できないとの話が少なくありません。

では、労働者代表と覚書を交わすことで、寺側は「時間外割増賃金は支給しない」は有効なのでしょうか?

労使協定の効力は、違法状態を解消すること

確かに、労働者代表と交わす書類は重要なものです。

また覚書と労使協定は違いますが、労働者代表と締結するもので労使協定があります。

これは公法的規制を免れるための要件として締結されるもので、労働基準法の賃金控除(24条),変形労働(12条の2ほか)、フレックスタイム(32条の3)、時間外休日労働(36条)などがあります。

加えて、賃金全額払いや1週40時間・1日8時間の労働時間規制の原則に対する例外の場合にも必要となります。

そもそも労働基準法は公法であり,使用者に国に対する義務が課され、この義務違反について刑罰が課されます。

そうしたことで、労使協定が締結された場合は刑罰を課さないという意味で、免罰的効力を有するとされています。

しかし、40年以上前に交わした覚書を根拠に、残業代を支払っていないことは違法です。

かりに労使協定だったとしても効力は、違法状態を解消することにあり、従業員の残業代支払いを不要とすることまでは、認められていません。

「信仰」と「業務」の違い

労働者代表と覚書を締結することで、寺側は「時間外割増賃金は支給しない」ことについては、以上のとおりでありますが、その背景には、何があるのでしょうか?

それは、「信仰」と「業務」の線引きが難しいことにあります。

労働組合「きようとユニオン」によると、僧侶2名の仕事は全国から訪れる門徒の世話をする「補導」を務めていた。

仕事が多い日には午前8時半から翌日午後まで連続32時間以上働くこともあった。覚書が締結されたのは1973年11月で、40年以上残業代不払いの状態が続いていました。

その結果、僧侶2名が外部の労働組合に加入し、寺側と労使交渉を行い、同派は2013年11月から2017年3月の不払い分として、計約660万円を支払ったといわれています。

東本願寺によると、2016年1月から「内払い金」という名目で、固定残業代を支払っています。

それでも固定残業代で定められた時間外労働時間数を超えて場合は、差額を支払う必要があります。

今後は「勤務時間の把握と管理を徹底すると、担当の総務部長は説明しています。

労働者代表と「時間外割増賃金は支給しない」と覚書の効力

以上述べたとおり、労働者代表と「時間外割増賃金は支給しない」と覚書を締結していても、残業代不要とすることまでは、認められていません。

したがって、寺側は、僧侶の残業代を支払う必要があります。


社会保険労務士、渋谷区の高山英哲でした。

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