社会保険労務士の渋谷区の高山英哲です!

こんにちは。

飲食店の管理職である店長の残業代のあり方が、現在も問題となっています。

従業員に時間外労働、深夜労働、または休日労働をさせる場合には、会社は割増賃金を支払う必要があります。

長時間労働が慣行化している飲食店で、給与額の高い店長に残業代を支払った場合、経営が維持できないと聞くことがあります。

では、管理職である店長に、残業代を支払う必要が、本当にあるのでしょうか?

 

 

役職手当と労働基準法の管理監督者の定義

確かに、管理職である店長に「管理職手当」「店長手当」などの役職手当を支給している会社は、少なくありません。

会社はこの役職手当をもって、残業代相当の見合い手当を、あらかじめ支払っているのだから、残業代を、一切支払う必要がないと考えています。

また、労働基準法で管理監督者は、労働時間、休憩および休日に関する規定の適用除外を認めています。

そうしたことで、店長には、労働基準法の時間外労働割増賃金・休日割増賃金の支払い不要とすることは問題ないと認識しています。

しかし、あらかじめ「役職手当」を、支給しているから残業代を一切支払う必要はない、「役職名(店長)」によって、残業代を一切支払う必要はないという、会社の考えは、誤った解釈です。

例えば、店長に「役職手当」を支払っても、労働基準法では、残業代支払いを不要とすることは、認められていません。

加えて、会社が自ら定めた「役職名(店長など)」を根拠にすることも、労働基準法では、残業代支払いを不要とすることは、認められていません。

押さえておきたい 大手外食チェーン店の店長と管理監督者の範囲、日本マクドナルド事件 3つのポイントとは

「役職手当」の支払い、「役職名(店長)」のあり方については、以上のとおりでありますが、その背景には、何があるのでしょうか?

それは、誤解を招く、労働基準法第41条第2項の解釈にあります。

【大手外食チェーン店の店長と管理監督者の範囲】について争われた、日本マクドナルド事件を、チェックしましょう。

日本マクドナルド事件 
審判一審(地方裁判所)
裁判所名東京地方裁判所
事件番号平成17年(ワ)26903号
裁判年月日平成20年1月28日
裁判区分判決
全文日本マクドナルド事件(東京地裁平成20年1月28日判決)PDF(Adobe Acrobat)
ブログ日本マクドナルド(店長)事件(東京地裁 平20. 1.28判決 第3723号)
厚生労働省労働基準法における管理監督者の範囲の適正化のために
厚生労働省多店舗展開する小売業、飲食業等の店舗における管理監督者の範囲の適正化について

この事件は、大手外食チェーン店の店長が残業手当を支給する必要のない、労働基準法第41条第2項の管理監督者に該当するか否かについて争われた事件です。

ご存知の方も多いでしょう。裁判の3つのポイントは次のとおりです。

裁判の3つのポイント 
①職務内容、責任と権限②勤務態様③賃金等の待遇

 ①店長の職務、権限は、店舗内の事項に限られていた。

経営者との一体的な立場において、労働基準法の労働時間等の枠を超えて事業活動することを要請されてもやむをえないものといえるような重要な職務と権限を付与されているとは認められない。

②勤務実態からすると、労働時間に関する自由裁量性があったとも認められない。

③処遇の面でも平均年収でみる限り一般従業員より手厚くされているるが、評価手当の少ない店長の年収は、下位の職位にある従業員を下回っている。

労働基準法の労働時間等の規定の適用を排除される管理監督者に対する処遇としては、十分であるとはいい難い。

労働基準法第41条第2項の管理監督者の3つのポイント 
ポイント1職務、権限が店舗内の事項に限られ、経営者との一体的な立場において、労基法の労働時間等の枠を超えて事業活動することを要請されてもやむをえないものといえるような重要な職務と権限を付与されているとは認められない
ポイント2勤務実態からすると、労働時間に関する自由裁量性があったとも認められない
ポイント3処遇の面でも平均年収でみる限り一般従業員より手厚くされているものの、評価手当の少ない店長の年収は、下位の職位にある従業員を下回るなど、労基法の労働時間等の規定の適用を排除される管理監督者に対する処遇としては、十分であるとはいい難い

以上により、大手外食チェーン店の店長と管理監督者の範囲について争われた、日本マクドナルド事件では、店長は、労働基準法第41条第2項の管理監督者に当たるとは認められないとされました。

 

よくわかる 労働基準法第41条第2項


押さえておきたい 大手外食チェーン店の店長と管理監督者の範囲、日本マクドナルド事件については、以上のとおりであります。

最後に、労働基準法第41条第2項をチッェクしてみました。ポイントは、次の4点です。

4つのポイント 
職務内容労働条件の決定その他労務管理について、経営者と一体的な立場にあり、労働時間等の規制の枠を超えて活動せざるを得ない重要な職務内容を有していなければ、管理監督者とは言えません。
責任と権限労働条件の決定その他労務管理について、経営者と一体的な立場にあるというためには、経営者から重要な責任と権阻を委ねられている必要があります。「課長」「リーダー」といった肩書があっても、自らの裁量で行使できる権限が少なく、多くの事項について上司に決裁を仰ぐ必要があったり、上司の命令を部下に伝達するに過ぎないような者は、管理監暼者とは言えません。
勤務態様管理監督者は、時を選ばず経営上の判断や対応が要請され、労務管理においても一般労働者と異なる立場にある必要があります。労働時間について厳格な管理をされているような場合は、管理監督者とは言えません。
賃金等の待遇管理監督者は、その職務の重要性から、定期給与、賞与、その他の待遇において、一般労働者と比較して相応の待遇がなされていなければなりません。

 

 

飲食店の店長には、労働基準法第41条第2項の管理監督者に当たるとは認められない場合は。。

以上のとおり、飲食店の店長には、労働基準法第41条第2項の管理監督者に当たるとは認められない場合、時間外労働、深夜労働、または休日労働をさせる場合には、会社は割増賃金を支払う必要があります。

したがって、管理職である店長に、残業代を支払う必要がないというのは、誤った考えです。

 

日本マクドナルド事件 
審判一審(地方裁判所)
裁判所名東京地方裁判所
事件番号平成17年(ワ)26903号
裁判年月日平成20年1月28日
裁判区分判決
全文日本マクドナルド事件(東京地裁平成20年1月28日判決)PDF(Adobe Acrobat)
ブログ日本マクドナルド(店長)事件(東京地裁 平20. 1.28判決 第3723号)
厚生労働省労働基準法における管理監督者の範囲の適正化のために
厚生労働省多店舗展開する小売業、飲食業等の店舗における管理監督者の範囲の適正化について

 

 


社会保険労務士、渋谷区の高山英哲でした。

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