よくわかるM&Aの労務DD:知っておきたいM&Aの5つ手法を本日は解説いたします。
こんにちは。渋谷区の特定社会保険労務士の高山英哲です。https://www.1roumshi.com/
昨日は、都心のビル屋上で月を眺めながら、仲間とビール、ソフトドリンクをかわしながら歓談をしました。ちなみに、私はソフトドリンク派です。
やっぱいいですね、今の時期。気持ちが開放された中で、風は吹かれた中で意見交換をするのは。
ビールもすすみます。
隣の席で飲んでいるサラリーマン、OLの方も気にせず、出てきた話は【M&A】の話です。
【M&A】は、最近になって、耳によく入ってきた言葉ではありません。でも皆さん、とっても気になるようです。
「なんかさぁー、うちの会社、合併するみたい」とか「私の会社、そんな話が出てた」とか「コンサル会社から、すすめられている」など。
なぜ【M&A】が話題になるのか?それは、にわかに大企業だけではなく、中小企業でも将来に向かって、悩んでいること、困っていることがあるからです。
現在、どんな業績がよくても、経営者にとっては先を見据えた考えがあります。
そこで、今日からシリーズとして、よくわかるM&Aの労務DD(人に関する定量的な調査)を、ステップバイステップで解説していきます。本日は1回目です。
今日は、M&Aの労務DDの解説の前に、M&Aの定義と、M&Aで用いられる代表的な5つ手法と特徴を一緒にみていきましょう。
まず定義です。Mergers and Acquisitions: 企業の買収・合併の総称を【M&A】といいます。
そんなの知っているよ。そんな声も聞こえてきます。
昨今、中堅中小企業における事業承継問題対策について議論がされています。あたなもご存知だと思います。基礎知識から解説していきますので、知識がある、あなたも少しお付き合い下さいね。
次に手法です。M&Aで用いられる代表的な5つ手法と特徴は以下のとおりです※1。
※1事業引継ぎガイドライン~M&A等を活用した事業承継の手続き~49頁~53頁「中小企業向け事業引継ぎ検討会」
①株式譲渡
株式譲渡とは、譲り渡し企業のオーナーが、所有している発行済株式を譲り受け企業に譲渡することで、子会社となる手法です。
譲り渡し企業の株主(及び経営者)が変わるだけで、従業員等の会社内部の関係や、会社の債権債務、第三者との契約、許認可等は原則存続する。手続きも他の方法に比べて相対的に簡便です。
●選択に向いているケース
★株式を現金化したい場合
★知名度・許認可など、会社組織そのものに価値が係属しており、組織をそのまま引継ぎたい場合
●選択に不向きなケース
★譲り渡し企業に反抗的な株主が存在する場合
★事業の一部のみを譲渡したい場合
●譲り渡し側が個人事業の場合
★個人事業の場合は株式がないことから、事業譲渡が選択されることが多いが、一度法人成りしたうえで、法人の株式譲渡の形態を選択することもあります。
②事業譲渡
事業譲渡とは、譲り渡し企業が有する事業の全部又は一部を譲渡する手法(工場、機械等の資産や負債に加え、ノウハウや知的財産権等も含む)です。
資産、負債及び契約等を個別に移転させるため、債権債務、契約関係、雇用関係、許認可を、一つ一つ同意を取り付けて切り替えていかなければならないことから、手続きが煩雑になりがちであるが、個別事業・資産毎に譲渡が可能なことから、事業の一部を手元に置いておく対応も可能となります。
譲り受け企業にとっては、特定の事業部門(資産負債)のみを買収できるため、効率的というメリットがあります。
●選択に向いているケース
★複数の事業のうち、一部を譲り渡し/譲り受けしたい場合
★事業部門のメンバーによる独立(MBOなど)
●選択に不向きなケース
★株式を現金化したい場合(譲渡代金は、株主ではなく譲り渡し企業が受け取るため)
★譲り渡し企業の従業員の雇用をそのまま継続したい場合(一旦退職し、譲り受け企業で雇用、という扱いとなる)
★再取得が困難な許認可を有する場合(許認可庁との相談要)
③合併(吸収合併)
合併とは、2つ以上の会社を1つの法人格に統合する手法です。
会社の全資産負債、従業員等を譲り受け企業(合併存続会社)に移転し、譲り渡し企業は消滅する。譲り渡し企業の株式は、原則、譲り受け企業の株式に一定の比率で交換されます。
法的にーつの法人となることから結合は強くなるが、一方で組織や人材も統合することから、合併しようとする企業同士の雇用条件の調整や、事務処理手続きの一本化等が難しくなることも想定されます。
なお、譲り受け企業にとっては、会社全体を包括承継することから、簿外債務等に注意する必要があることと、自社株式を対価とする合併の場合、買収費用は原則不要だが、譲り渡し企業の株主が自社の一部株主となる点に留意が必要です。
●選択に向いているケース
★複数ブランドの統一、重複部門の一本化などをしたい場合
●選択に不向きなケース
★オーナーの相続対策など、株式を現金化したい場合
★会社事業の一部のみを譲渡したい場合
④会社分割(吸収分割)
会社分割とは、原則として複数の事業を行っている会社が、ある事業部門のみを子会社又は兄弟会社として切り出し、その一方の会社を譲り受け企業に株式譲渡、又は合併(吸収分割)する手法です。
例えば、食品の製造・卸売を行なっている会社が、会社分割して2つの会社とし、製造部門だけ を手元に残して、卸売部門を譲渡するといったことが考えられます。
会社分割は、労働契約承継法によって分割事業の雇用が保障されることから、従業員の現在の雇用がそのまま確保されるメリットを有します。又、契約関係がそのまま分割した新会社に移転することや、許認可についても移転できるものがあること(許認可庁に要確認)もメリットのーつです。
なお、譲り受け企業にとっては、特定の事業部門のみを買収できるため効率的というメリットがあります。
●選択に向いているケース
★数の事業のうち、一部を譲り渡し/譲り受けしたい場合
★分割事業に属する従業員との雇用関係を維持したい/してほしい場合
★事業部門のメンバーによる独立(MBOなど)
●選択に不向きなケース
★譲り渡し企業に事業後継者が存在せず、残った事業を運営することができない場合
⑤業務提携・資本提携
業務提携は、企業間で業務上の協力関係を築く手法(共同物流や資材の共同調達、商品の共同開発等)であり、事業承継に向けた第一歩と位置付けられます。
他方、資本提携は、業務提携を更に強固にするために、支配権を持たない範囲で相互の株式を持ち合うことや、一方の会社の株式の取得、第三者割当増資の引き受け等を行う手法です。
資本提携や業務提携は、ソフトな提携を足がかりにして、両者の融合を図りつつ、徐々に事業承継をすすめていくような場合に活用可能な手法です。
●選択に向いているケース
★スポンサー企業との共同事業運営
★資本増強(第三者割当増資の場合)
なお、会社分割や事業譲渡を活用した場合は、過剰債務等により財政状況が悪化した事業体から、収益性の高い優良な事業だけを別会社として切り出し、残された不採算部門を特別清算する「第2会社方式」による事業承継対応も可能です(債権者の同意は必要)。
それぞれに選択に向いているケース、選択に不向きなケースが当然あります。これは、M&Aの目的・状況に応じて選択することなります。
会社の人事・労務、総務部の担当者の立場で考えた場合、選択した手法によってマネジメントを行ううえで考えなければならないポイントや施策が異なります。注意して下さいね。
いかがですか?初めて聞く言葉もあって、少し難しいですよね。
本日は、M&Aの定義と、M&Aで用いられる代表的な5つ手法と特徴を解説しました。
よくわかるM&Aの労務DDは、シリーズとしてこれからも取り上げて生きます。
是非、注目してください。
渋谷区の特定社会保険労務士の高山英哲でした。
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