こんにちは。渋谷区の特定社会保険労務士の高山英哲です。
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労働基準監督署の調査でも年金事務所の調査でも、「法律の知識」は不可欠。
そして、裁判になった場合、加えて「判例」のチェックも必要となります。
加えて「通達」による行政解釈の読み込こむケースも増えてきています。
それは、昨今の事例では「法律の知識」「判例」だけでは判断に迷うため「通達」で決断することがあります。
本日、ご紹介するのは、海外勤務者の負傷に対しての事案です。
判決のなかでは、通達の内容を考慮していることが、ひとつのポイントとなっています。それでは、あなたと一緒に、みていきましょう。
ご存知の人事労務担当者の方も多いでしょう。東京地裁と東京高裁とで反対の結論になった判決。
ここでいえるのは、海外出張か海外派遣かの判断は非常に難しいということです。
そこで、東京地裁と東京高裁で「海外派遣者」「海外出張者」の判断基準がわかれ、海外勤務者の負傷について逆転判決になったのはなぜか?
早速、考察しながら180秒でみていきましょう。
まずは、「海外派遣者」「海外出張者」の判断基準です。
●「海外出張者」とは、単に労働の提供の場が海外にあるにすぎず、国内の事業場に所属し、その事業場の使用者の指揮に従って勤務する労働者です。
●「海外派遣者」とは、海外の事業場に所属して、その事業場の使用者の指揮に従って勤務する労働者またはその事業場の使用者(事業主およびその他労働者以外の方)です。
ここまでは、いいですね。それでは、事案です。
労働者は、平成22年7月23日、上海において急性心筋梗塞を発症し死亡しました。会社は、上海で勤務するにあたり,労災保険の「海外派遣者」の特別加入の手続きをとっていませんでした。
そして、会社は労災申請。申請結果は、所轄労働基準監督署長は海外派遣に当たると判断して労災保険金の不支給決定しました。
理由は何故かって?
今回のケースは、事業所、指揮命令、労働者、仕事の実態等により「海外出張」とは認めることはできない。
加えて、会社は特別加入の海外派遣の手続きもとっていない。以上が理由です。
不服とした会社は、東京地方裁判所へ提訴。結果は棄却。
そして控訴。東京高裁は「海外出張」に当たるとし中央労働基準監督署長の不支給決定を取り消しました。
今回のケース気になるのは、海外派遣と海外出張の区別の行政解釈です。
通達をみつけました。早速チェックしていきましょう。
「海外出張者として保護を与えられるのか、海外派遣者として特別加入しなければ保護が与えられないのかは、単に労働の提供の場が海外にあるにすぎず国内の事業場に所属し、当該事業場の使用者の指揮に従って勤務するのか、海外の事業場に所属して当該事業場の使用者の指揮に従って勤務することになるのかという点からその勤務の実態を総合的に勘案して判定されるべきものである。」(昭和52.3.30 基発第192号)
つまり、指揮命令の使用者については、国内使用者か?それとも海外使用者か?のとちらかがで判定すると明記されています。ここは注目ですね。
そして、次に気になるのは、海外滞在期間です。
海外滞在期間の長短については、海外出張であるか、海外派遣であるのか判断基準とはされていません。
んーなるほど。。。この点は、期間の長短によって出張と派遣を区別して人事労務担当者もいると思います。注意して下さいね。
なお、特別加入制度のしおり(海外派遣者用)では、「海外派遣」「海外出張」の判断基準は次のとおり明示されています。
海外派遣と海外出張の区別
https://www.1roumshi.com/wp-content/uploads/2016/08/7ec8bde2ddcc2e804d768f25bfbb4163.pdf
「海外出張者」と「海外派遣者」のどちらかに当たるかは、勤務の実態によって総合的に判断されることになります。
●海外出張の例
1商談
2技術・仕様などの打ち合わせ
3市場調査・会議・視察・見学
4アフターサービス
5現地での突発的なトラブル対処
6技術習得などのために海外に赴く場合
●海外派遣の例
1海外関連会社(現地法人、合弁会社、提携先 企業など)へ出向する場合
2海外支店、営業所などへ転勤する場合
3海外で行う据付工事・建設工事(有期事業)に従事する場合
(統括責任者、工事監督者、一 般作業員などとして派遣される場合)
でも、東京地裁判決も東京高裁判決も。どのポイントなのでしょうか?
判決から考察し端的にいうポイントは、次のとおりです。
東京地裁の判決ポイントは、海外の会社が独立した事業場であったかどうかを重視。
東京高裁の判決ポイントは、労働者の仕事の実態、指揮命令関係。
会社が海外出張に当たると判断して特別加入の手続きをとらなかったときに海外勤務者が負傷したり死亡したりした場合に労働基準監督署長は海外派遣に当たると判断して労災保険金の不支給決定をしてしまう可能性もあります。
こん判例から学ぶとすれば、労働者が海外で勤務する場合には,特別加入の手続きをとっておいたほうが無難であると言えます。
あなたの会社では、社員が海外で勤務する場合、「海外派遣者」の特別加入の手続きはとっていますか?
もし、まだやっていない場合は、今回の判例を踏まえ、是非、社内で「海外派遣者」の特別加入の手続きについて検討をしてください。
渋谷区の特定社会保険労務士の高山英哲でした。
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