定額残業代について今後の実務ポイントを考察しました。
①就業規則、労働契約書等で定額残業代の手当額とそれ以外の賃金
(例:基本給と定額残業手当)が明確に区分され判別可能がであること。
②定額残業代の手当額が法律で計算されたの額と同額あるいは上回っていることが必要。
③就業規則、労働契約書等であらかじめ見込まれている【残業時間数】や【金額】が明示されている。
④見込まれている【残業時間数】は労働基準法第36条の上限として周知されいる月45時間
(昭和57年労働省告示69号・平成4年労働省告示第72号により示されたもの)以内とすること。
⑤過重労働による健康障害を防止するため事業者が講ずべき措置等(2002年2月12厚生労働省通達)
により時間外労働を月45時間以下とする適切な労働時間管理を行うこと。
⑥実際の時間外労働時間数が当初見込みの時間数を超えるときは、超える差額を支給する。
(差額を全く清算していない場合、定額残業代制度は無効であるとの基準を示した判例がある)
⑦定額残業代制度の導入の際に気をつけなければならないことは、不利益変更に該当する可能性が
高いこと。そのため従業員一人ひとりと書面での個別同意書を締結することが必要。
⑧従業員に対して、定額残業代制度の導入時は説明会は行うこと。もし争いが発生した場合、
説明会の有無は大きなポイントになる。
⑨給与明細書が重要になってきている。給与明細書には見込まれている【①残業時間数】及び【①を越えた時間数】を明記すべきである。
【最高裁判決 櫻井裁判官補足意見も支払い時に時間数を明示すべきと記載しています】
判官最高裁判決 櫻井裁補足意見(7頁後半箇所から)
⑩定額残業代としての性格を有することを就業規則に記載していること。
⑪就業規則は従業員代表の意見聴取、労働基準監督署への届出に加え、従業員に対しての周知性が
重要。周知性がないと定額残業代制度が無効になる場合が少なくない。
⑫就業規則の周知性を有効にするため、労働者の一人ひとりに就業規則を配布することが望ましい。
難しい場合は少なくとも各職場の見易い場所に掲示するか、あるいは労働者がいつでも見ることが
できるような場所に備え付けるなどの方法により、労働者に就業規則を周知させなければならない。
就業規則の周知性がないと判断された場合、就業規則が無効になる場合が少なくない。
⑬就業規則を配布しない場合、周知の正当性を認められるため労働契約書等に就業規則の保管場所
(例:2階総務部の書棚など)を明記してあることが望ましい。
⑭就業規則、労働契約書も整備されていても定額残業代制度が否定されることがある。
定額残業代制度の運用方法、支給実態が重要視されている。
⑮定額残業代制度について就業規則で明記してあっても次の点に注意することが必要。
●残業代を算定する基礎賃金に「諸手当」としている明記している場合。
なぜならば、定額残業代の手当自体を含めてしまうから。
●「○○手当に一定の時間外労働割増賃金が含まれている」通用しない。
時間外労働時間数が明らかでないため。
⑯定額残業代は、時間外労働割増賃金、休日労働割増賃金、深夜労働割増賃金に分ける必要がある。
「定額残業手当は、第○○条に定める時間外労働割増賃金・休日労働割増賃金・深夜労働割増賃金の
30時間相当額を支払う」という規程では時間外・休日労働・深夜労働に対する賃金がそれぞれ、
いくらになるかが不明です。それぞれ分ける必要がある。
定額残業代についての今後のポイントについては、その都度追記いたします。