東京都渋谷区神南にある高山社会保険労務士事務所です。営業時間は9時~18時です。渋谷の社労士として東京都社会保険労務士会の渋谷支部に所属しております。

定額残業代

定額残業代の正体、その姿とは

定額残業代を運用する場合、労働契約、制度設計、周知方法、個別同意など。悩ましい事案は少なくありません。。

●定額残業代に関する記事一覧です。

 

社長  「2年前からの残業代だって!?」
従業員 「はい、支払って下さい」

社長   「入社する時に言ったでしょ!うちの会社は残業代含めて給与30万だって」
従業員「はぁ~。。そんな契約なんて、してないっすよぉーー労働契約書だって見たことないしね」

最近、よく聞く会話である。

社長   「入社する時に言ったよ!うちの会社は残業代含めて給与30万!!
会社作って30年以上ずっと、これでやってきたのぉーー!」

従業員「初めて聞きましたよ。そんな説明を受けたこともないですよ。
残業代含めて給与30万ですか。。
そんなら、就業規則、労働契約書をみせてくださいよ。。」

このようなトラブル、また、言った言わないの争いが非常に多い。

少なくともいえることは、就業規則が作成され、所轄労働基準監督署への届出も完了。
当然従業員へも周知がされていること。

加えて入社時に労働契約書に定額残業代制度を明示した内容で
労働契約を締結していれば、
避けることは可能であっと考えられる。

つまり、このようなトラブルが発生する前に、事前に防止することは十分できる。

労働者からの会社への未払い残業代請求のトラブルが増加しています。
加えて、賃金不払いに対して労働基準監督署の調査も厳しさを増しています。

東京都で125企業に対して割増賃金約17億円の波及支払命令がありました。

Correction result of the wage nonpayment

 2014年01月15日  都内125企業が割増賃金17億円を遡及支払

対象企業数 は125件 (対前年度比 △11件)です。
対象企業数を業種別にみると、商業が44件と最も多い業種です。

次いで、その他の事業(情報処理サービス業等)30件
教育・研究業10件の順であり、これら業種で全産業の7割弱を占めています。

象労働者数 は14,540人 (対前年度比△2,931人)です。

対象労働者を業種別にみると、その他の事業(情報処理サービス業等)が7,392人と
最も多くなっています。

次いで、商業3,131人、保健衛生業1,479人の順であり、これら業種で
全産業の8割強を占めています。

遡及払額 は17億6,464万円 (対前年度比△5億5,826万円)です。
遡及払額を業種別にみると、商業が7億8,821万円と最も多くなっています。

次いで、その他の事業(情報処理サービス業等)4億2,021万円、
接客娯楽業2億345万円の順であり、これら業種で全産業の8割を占めています。

1 企業当たりの支払金額は1,412万円となり、
労働者1人の平均支払金額は12万円です。

今後も労働局では、賃金不払残業を解消するための監督指導をより一層、重点的・積極的に推進し、
長時間労働の抑制、過重労働による健康障害の防止とともに賃金不払残業の解消に向けた
労使の自主的な取組の促進を図るための周知・啓発活動を展開することとしています。

法律の規定どおりに残業代は支払うべきです。

ただ企業競争の厳しさが増し、経営認識の甘さから法律どおりに残業代を支払うと
経営を続けていかないケースが多々あります。

そのため企業は、すぐにでも残業代請求のトラブルを予防する必要があります。
最初に思いつくのは「定額残業代」です。

「定額残業代」とは残業代について,労働時間の実態を算出し 法所定の額を支払うのではなく,
毎月固定的に定額の残業代を支払う方法です。

ただ最近の「定額残業代」の判例では、会社側に対して厳しい判断を示す傾向が強いといえます。
そこで定額残業代の運用が有効であると認められるためには、どうすればよいのか?

定額残業代について今後の実務ポイントを考察しました。

①就業規則、労働契約書等で定額残業代の手当額とそれ以外の賃金
(例:基本給と定額残業手当)が明確に区分され判別可能がであること。

②定額残業代の手当額が法律で計算されたの額と同額あるいは上回っていることが必要。

③就業規則、労働契約書等であらかじめ見込まれている【残業時間数】や【金額】が明示されている。

④見込まれている【残業時間数】は労働基準法第36条の上限として周知されいる月45時間
(昭和57年労働省告示69号・平成4年労働省告示第72号により示されたもの)以内とすること。

⑤過重労働による健康障害を防止するため事業者が講ずべき措置等(2002年2月12厚生労働省通達)により時間外労働を月45時間以下とする適切な労働時間管理を行うこと。

⑥実際の時間外労働時間数が当初見込みの時間数を超えるときは,超える差額を支給する。
(差額を全く清算していない場合、定額残業代制度は無効であるとの基準を示した判例がある)

⑦定額残業代制度の導入の際に気をつけなければならないことは、不利益変更に該当する可能性が高いこと。そのため従業員一人ひとりと書面での個別同意書を締結することが必要。

⑧従業員に対して、定額残業代制度の導入時は説明会は行うこと。もし争いが発生した場合、
説明会の有無は大きなポイントになる。

⑨給与明細書が重要になってきている。給与明細書には見込まれている【①残業時間数】及び【①を越えた時間数】を明記すべきである。

【最高裁判決 櫻井裁判官補足意見も支払い時に時間数を明示すべきと記載しています】
最高裁判決 櫻井裁判官補足意見(7頁後半箇所から)

⑩定額残業代としての性格を有することを就業規則に記載していること。

⑪就業規則は従業員代表の意見聴取、労働基準監督署への届出に加え、従業員に対しての周知性が
重要。
周知性がないと定額残業代制度が無効になる場合が少なくない。

⑫就業規則の周知性を有効にするため、労働者の一人ひとりに就業規則を配布することが望ましい。
難しい場合は少なくとも各職場の見易い場所に掲示するか、あるいは労働者がいつでも見ることが
できるような場所に
備え付けるなどの方法により、労働者に就業規則を周知させなければならない。

就業規則の周知性がないと判断された場合、就業規則が無効になる場合が少なくない。

⑬就業規則を配布しない場合、周知の正当性を認められるため労働契約書等に就業規則の保管場所
(例:2階総務部の書棚など)を明記してあることが望ましい。

⑭就業規則、労働契約書も整備されていても定額残業代制度が否定されることがある。
定額残業代制度の運用方法、支給実態が重要視されている。

⑮定額残業代制度について就業規則で明記してあっても次の点に注意することが必要。
★残業代を算定する基礎賃金に「諸手当」としている場合。なぜならば定額残業代の手当自体を含めてしまうから。
★「○○手当に一定の時間外労働割増賃金が含まれている」通用しない。時間外労働時間数が明らかでないため

⑯定額残業代は、時間外労働割増賃金、休日労働割増賃金、深夜労働割増賃金に分ける必要がある。
「定額残業手当は、第○○条に定める時間外労働割増賃金・休日労働割増賃金・深夜労働割増賃金の
30時間相当額を支払う」という規程では時間外・休日労働・深夜労働に対する賃金がそれぞれ、
いくらになるかが不明のため、それぞれ分ける必要がある

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