長澤運輸事件の労働判例を斬を考察します(東京高等裁判所:平成28年11月2日判決)
みなさん、こんにちは。
今回は、定年後、再雇用者と正社員との賃金相違における労働契約法第20条違反の有無について争われたものです。私は、同一労働同一賃金の政府の動向が気になっています。 あなたも、アルバイト、契約社員と社員との給与額について違和感がある?方もいるでしょう。
本日は、この判決を、私達で考えていきましょう。
高等裁判所 |
長澤運輸事件 |
平成28年(ネ)2993号 |
東京高等裁判所 平成28年11月2日判決 |
長澤運輸事件(東京高等裁判所 平成28年11月2日判決)PDF(Adobe Acrobat) |
地方裁判所 |
長澤運輸事件 |
平成26年(ワ)27214号、31727号 |
東京地方裁判所 平成28年5月13日判決 |
長澤運輸事件(東京地方裁判所 平成28年5月13日判決)PDF(Adobe Acrobat) |
東京高等裁判所は、運送会社の運転手が、定年退職後、使用者と期間の定めのある雇用契約を締結して再雇用された場合、定年前と同じ運転業務に従事していたことにより、定年前よりも給与が減額されたことについて、労働契約法20条に違反しないと判断されました!
逆転判決ですね。昨今、定年後の再雇用で、業務内容が同じなのに、給与が減額。あなただって、それって「おかしいーでしょー」と思いますよね?嘱託社員は、仕事内容の話に始まり、責任感、いくらもらっているか、どんな労働条件なのかを、会社に対して鋭く切り込んで話しをぶつけてきます!
そういう意味で、今回の裁判は、興味深い内容でした。現在、運送業の経営者も注目してその真実に迫ることができるはずです。
労働働契約法第20条 とは?
最初は、労働契約法第20条をみていきます。
労働契約法第20条 (期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止)
第20条 有期労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件が、期間の定めがあることにより同一の使用者と期間の定めのない労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件と相違する場合においては、当該労働条件の相違は、労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下この条において「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならない。
この条文のポイントは、「職務の内容」と「該職務の内容および配置の変更の範囲」です。ん。。。「職務の内容」「該職務の内容および配置の変更の範囲」の定義、抽象的な表現ですけど。今イチ、消化できません。
今回、逆転判決になった理由をみていきましょう。
逆転判決になった、一つ理由は?
労働契約法第20条の「職務の内容」と「該職務の内容および配置の変更の範囲」は、定年後も定年前と同じであることは、会社は、少なくありません。
あなたも、感じませんか?一審判決では、「職務の内容」と「該職務の内容および配置の変更の範囲」は同じと判断。
そのため、賃金格差を正当と解すべき特段の事情がない限り、不合理であるしました。
いいですか?
一審では、おかしいでしょって、言っているわけです。会社にとっては、厳しい判決です。私たちとっても、インパクトを与える判決でした。今までの考え方を、変えなくてはいけないって。
ただ、控訴審判決では、「職務の内容」「該職務の内容および配置の変更の範囲」の他に「その他の事情」をくわて、総合して判断しています。社会情勢、賃金の変更額、労働組合との協議内容等も考慮した上で、合理性の有無も判断材料として加えてことになります。その他の事情」って。。?会社によってもマチマチですよね。
今後の課題になるでしょう。
同一労働同一賃金の視点で考察
最後に、一つだけ?
同一労働同一賃金の視点で考察しました。今後のトラブルを避けるためには、運転手の仕事内容確認表を作成のうえ、労働契約の都度、確認をすることは、不可欠と考えます。そんな時のために、次のようなものを作成してみました。
仕事内容 | 正社員 | 嘱託社員 |
県外の長距離運転 | ○ | ― |
県内の短距離運転 | ― | ○ |
時間外労働 | ○ | ― |
休日労働 | ○ | ― |
クレーム対応 | ○ | ― |
洗車業務 | ○ | ○ |
いかがですか?
仕事内容、責任度合い等、正社員と嘱託社員の違いを明らかにすること。
そして、本人からも同意していただくこと等、あらかじめ適切な運用をすれば回避はできるのでは?
参考になれば、幸いです。
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社会保険労務士、渋谷区の高山英哲でした。
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