それでもボクはやってない
監督 周防正行
真綿でクビを
しめられるように
ジワジワと追い込まれます。
映画館ではなく
裁判所の傍聴席にいるかのような
錯覚を起こします。
『Shall We ダンス?』の周防正行監督作品
11年ぶりにメガホンを取った
本格的な社会派ドラマ。
2時間20分間、余計なことを
一切、考える事がない
超々シリアスな作品です。
竹中直人の登場シーンも
一切、笑いがおきません。
気持ちが
おさえられず
すすり泣いてしまう
シーンもあります。
特に、被告の母親役の
もたいまさこ。
息子の無罪を信じて
行動する姿は
気持ちを、おさえることができません。
ストーリーは、淡々と
ながれて、いきます。
観ている人の心を
羽交い絞めにしながら。
朝の満員電車
女子中学生に痴漢に間違われて
駅事務室へ連れられ
手錠をかけれれ、警察に連行
取調べで、否認をすると
拘置される
そして起訴
数ヶ月にわたる何回もの裁判
絶対無実だから
最後は正義が勝つから。
だれかが助けてくれるから。
自分自身が
一番わかっているから・・・・・
無意識の期待が
被告人には
あります。
ただ、逮捕、拘留、裁判と
すべては有罪ありきで進んでいきます。
まるで、ベルトコンベアーのように。
痴漢=迷惑行為防止条例違反は
交通違反並みの罰金刑だから
現に認めた犯人はすぐに帰ってしまう。
しかし
俺は、やっていない!だから裁判で闘う
と決めたとたんに
被告人の
人生を賭けた戦いが始まる。
本当におしりに触ったかどうかを
若者である被告人は
人生、将来を賭け
警察・検察は
メンツを賭けて、
お互いに、
刀のさやを抜く。
200件以上の裁判を傍聴しながら
周防監督が入念な調査を
重ねて、作った事がよく理解できる
シナリオ。
時間の経過とともに
同情から、怒りに変化するのは
痴漢冤罪裁判の
本当の闇がみえてくるから。
炙り出された
歪(ひずみ)
日本の刑事裁判制度を
上段の構えから、真直ぐに
バッサリ斬る。
周防正行監督の
超一級品の映画です。