社会保険労務士です。渋谷で開業しています。
こんにちは、高山英哲です。
あなたへ、本日ご案内するのは「飲食業・外食産業の懲戒処分」についてである。
懲戒処分をするうえで、知っておきたい3つの有効要件を検討していく。
【厚生労働省:確かめよう 労働条件】
http://www.check-roudou.mhlw.go.jp/index.html
「懲戒」に関する具体的な裁判例の骨子と基本的な方向性
http://www.check-roudou.mhlw.go.jp/hanrei/kaiko/choukai.html
あたたの会社でも、社員、パートなどに懲戒処分を
検討したことは、あるだろう。
しかしながら、懲戒をするうえで、この有効要件の知識がないと、
店舗従業員は「何を根拠に基づいて、こんなことをするんだ」、
という思いが終始つきまとう。
始末書、減給、出勤停止といった、ひとつ、ひとつ、段階的に
すすめていっても、提示される内容を納得できず、異議の申し立てを受ける。
ケースにより、やがて、店舗全体の士気にも影響することも少なくない。
独立行政法人労働政策研究・研修機構:(56)【服務規律・懲戒制度等】使用者の懲戒権
http://www.jil.go.jp/hanrei/conts/06/56.html
そこで今回は、あなたと、こうしたリスク回避のため
「飲食業・外食産業の懲戒処分。知っておきたい3つの有効要件」をみていく。
さっそく、ポイントを、チェックしていこう。
そもそも、懲戒処分とは何か?
「懲戒処分」とは、企業秩序に違反した労働者に対し、
使用者によって一方的に課せられる制裁だ。
懲戒処分の行使は使用者が一方的に行うものである。
それゆえ、行使に当たり労働者の同意は必要なし。
とはいえ、懲戒処分は、企業における刑罰ともいえる。
したがって、実行する場合、留意すべき点も多く、慎重な対応が必要だ。
それでは、懲戒処分の種類には、どういったものがあるか。
引き続き解説しょう。
➀ 譴責・戒告
「譴責・戒告」とは、いずれも労働者の将来を戒める処分である。
戒告が始末書の提出を求めないのに対し、譴責は始末書の提出を伴うという点で、一般的に戒告のほうが軽い処分だ。
処分を受けることで、昇給や賞与の支給などにおいて人事考課上不利益に考慮されることが多い。
② 減給
「減給」とは、労働者が労働義務を履行し、賃金請求権が発生しているにもかかわらず、
制裁として賃金から一定額を差し引くことだ。
減給できる金額に対しては、労働基準法91条で制限が設けられている。
③ 出勤停止
「出勤停止」とは、労働契約を存続させながら、
制裁として一定期間労働者の就労を禁止することだ。
一般的に、出勤停止期間中は賃金が支給されず、
勤続年数にも通算されない。
ここで押さえておきたいことがある。
それは、出勤停止による賃金の不支給は
「減給の制裁」には当たらない、ということだ。
④ 降格
「降格」とは、制裁として職能資格制度における資格や
職務等級制度における等級を引き下げることだ。
職位や役職を引き下げる「降職」は、
人事権の行使としても行われる。
⑤ 論旨解雇
「論旨解雇」とは 一般には、懲戒処分として退職届の提出を勧告し、
一定期間内に退職届の提出がなされれば、任意退職・依願退職扱いとする。
とはいえ、退職届の提出がなければ、懲戒解雇とするという処分を指すことが多い。
ただし、会社によっては、「将来を戒め退職金を支払って解雇する」というように
懲戒解雇とは別の「解雇」として定義していることもある。
⑥ 懲戒解雇
「懲戒解雇」とは、懲戒処分として、労働契約を
使用者が一方的に解消する処分だ。
懲戒処分の中で最も重い処分である。
解雇の予告またはそれに代わる解雇予告手当を支払わず(労基法20条)
即時に行われ、退職金の全額または一部不支給を伴うことが多い。
押さえておきたい、懲戒処分の有効要件
いよいよ本日の本題だ。
ここからは、使用者が労働者を懲戒できる場合の有効要件をみていく。
懲戒事由が、労働者の行為の性質および態様、その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合には、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は無効とする(労契15条)。
近年の最高裁判例によって要約されていた懲戒権濫用法理が法文化された。
懲戒処分の有効要件は、次の3点だ。
①就業規則の明示された懲戒処分の根拠規定存在しているか?
懲戒処分を行うには「使用者が労働者を懲戒することができる場合」(労契法15条)である。
要するに、就業規則で懲戒の種別および事由を定めておくこと必要だ。
(フジ興産事件 最高裁二小 平15.10.10判決)
この懲戒処分に関する定めは限定的に解釈される。
ゆえに懲戒事由に関しては、ある程度網羅的に定めることが求められる。
さらに就業規則が効力を有するために、忘れてならないことがある。
それは、何か?
就業規則の適用を受ける、労働者に周知させることだ。この手続きを、怠ってはならない。
当然のことではるが、懲戒処分は労働者にとっては不利益な処分である。
したがって、対象となる行為より前に、懲戒に関する規程が
あらかじめ定められていること絶対必要だ
これをお読みのあなたならば、ないと思うが。。
労働者の行為に対して事後的に懲戒に関する規程を定めて、
遡及して懲戒処分を行うことは、もちろん、できない。
②懲戒事由への該当があるか?
懲戒処分が有効であるためには、
「客観的に合理的な理由」(労契法15条)必要だ。
加えて労働者の行為が、懲戒規程において定められた
懲戒事由に該当しなくては、ならない。
就業規則の懲戒事由は、多様な非違行為に柔軟に対応するため
広範で包括的な文言が用いられている。
しかしながら、裁判所では、懲戒事由該当性の判断に際して、
広範な文言をそのまま受け入れることはしない。
傾向としては、労働者保護の観点から限定解釈をしている。
懲戒事由の該当性の判断は、形式的な文言の判断ではなく、
個別の事案で、非違行為の内容、程度を含め検討することだ。
懲戒処分は労働者に対する不利益措置だ。ゆえに裁判による紛争リスクが高い。
こうした背景から、会社側で気をつけることはに、何か。
懲戒処分の有効要件は会社側で立証責任がある。
したがって、労働者と争う場合は、客観的な証拠に基づいた事実認定が重要だ。
③処分の相当性は適切か?
処分の相当性も懲戒処分の有効要件だ。
相当性は「当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして」判断される。
例えば、労働者の行為の態様・動機、業務に及ぼした影響、損害の程度にくわえ、労働者の反省の態度・情状・過去の処分歴などを総合考慮した結果、判断されることになる。
相当性は、懲戒事由と懲戒処分の重さのバランスが要求される。
あまりにも重過ぎる処分は相当性を欠くとして無効となる。
さらに、同じ事案で、過去の処分例、賞罰委員会の開催、弁明の機会の付与など。
懲戒処分に至るまでの手続き的相当性(適正手続き)も求められる。
したがって、懲戒処分に至るまでの「適正手続き」については、十分な協議をして、すすめるべきだ。
【厚生労働省:確かめよう 労働条件】
http://www.check-roudou.mhlw.go.jp/index.html
「懲戒」に関する具体的な裁判例の骨子と基本的な方向性
http://www.check-roudou.mhlw.go.jp/hanrei/kaiko/choukai.html
独立行政法人労働政策研究・研修機構:(56)【服務規律・懲戒制度等】使用者の懲戒権
http://www.jil.go.jp/hanrei/conts/06/56.html
最後まで、お付き合いいただき、ありがとうございました。
あなたの会社の、改善の一助になれば幸いである。
渋谷の社会保険労務士の高山英哲でした。
https://www.1roumshi.com/profile/
高山社会保険労務士事務所
電話 03-5784-0120
住所 東京都渋谷区神南1-5-4 ロイヤルパレス原宿5階