渋谷区の社会保険労務士です。
こんにちは、高山英哲です。
あなたと、今日学ぶことは「飲食業・外食産業、パート社員の親(父・母)からのクレーム。モンスターペアレントとの向き合い方」である。
店舗に対して自己中心的かつ理不尽な要求をする従業員の親(父・母)、最近は少なくないだろう。
これを今、お読みのあなたは、「うちの職場、店舗では、モンスターペアレントからのクレームはな、ない」と思いながらも、もし「あったら、どうしょう。。」と。
そんな思いを抱えているのでは、ないだろうか。
そこで、今回はあなたと「モンスターペアレントとの向き合い方」を摘出し、解決策の出発点から考察していく。
私たちの提案はシンプルだ。
あなと一緒に、ステップ・バイ・ステップで、意見交換をしながら、すすめていく。
特に今まで「モンスターペアレントからのクレーム」の問題点を、理解していない場合、実践して頂ければ驚くほどの成果を得られるはずだ。
ぜひ参考にして欲しい。
早速、すすめていくこととする。
ステップ1= まず「モンスターペアレント」の正体を、明らかにする
そもそも「モンスターペアレント」とは、何か。
ズバリ!「教師・学校、教育委員会に対し、自己中心的で常識を超えた理不尽な要求、クレームをつきつける保護者」のことだ。
今、和製英語とされている。
こうした自己中心的で常識を超えた理不尽な要求、クレーム、最近は会社、職場、店舗へも、つきつけてくるケースは、後を絶たない。
1-1 会社、職場、店舗で困る理由は、何か
このような保護者の対応に疲労困憊し,うつ病を発症する役員、スーパーバイザー、店長が多いと言われている。
それはなぜか?
理由は次の2点だ。
まず一つ目は職場、店舗で「対応方法」が、わからない。
そして二つ目は、役員、スーパーバイザー、店長は、その対応で「エンドレスで時間が割かれる」、からだ。
1-2 クレームは、飲食業・外食業だけか? 他業種に学ぶ
自己中心的で過干渉な親(父・母)が増えてきている事情は、学校・教育委員会、職場、飲食業・外食産業の店舗だけででは、ない。
医療現場でも増加している。
例えば、医師や看護師などの医療業務従事者にクレーム、自己中心的な要求をつきつけてくる。
さらに、気に入らないことがあると暴力を振るうなどする悪質な患者の「モンスター・ベイシェント」もいる。
そこで医療現場では、いち早く「対策マニュアル」を準備している。
この「対策マニュアル」を使って運用している病院やクリニックも増加傾向だ。
こうした医療現場の対応と同じように、飲食業、外食産業も「モンスターペアレント」に、組織で体制を構築し、進むべきだ。
1-3 これから、訪れる危機感を、察知する
では「モンスター・ベアレント」「悪質クレーマー」が、
なぜ、生まれてくるのか。
その答えは「社会の中で一人ひとりの精神に余裕がない」からだ。
さらにストレス社会のなかで人間関係が蔓延しつつあるという側面もある。
子どもが就職し社会人となれば、親はその自立を促すことが当然だった。
これは、むかしの、話だ。
超少子高齢化時代を迎えた現在、親の子どもに対する関心度合いは、
高まっている。
あなたも、感じていないか?内容によっては、
異常といえる事案も、ある。
その度が過ぎると、社会問題として発展するケースも生まれる。
今後も、あなたの会社、職場、店舗へ親が介入してくることは十分予想される。
ステップ2= モンスターペアレントが、あなたの店舗へクレームを言う、理由
ステップ1で、あなたは「モンスターペアレント」の正体、姿を理解した。
それでは、なぜ、「モンスターペアレント」から、クレームが発生するのか。
ここからは「モンスターペアレントが、あなたの店舗へクレームを言う」理由を、考えていくこととする。
あなたが、店舗を管理するうえで、気づいておきたい、理由は3点だ。
これらの理由のひとつでも、欠けても運用にすることは、できない。
幸いなのは、これらの3つの理由は、シンプルだ。
あなたも、容易に理解できるだろう。
2-1 理由1 親は、長時間労働、過重労働で子どものことが、心配である
2017年3月末に「働き方改革実行計画」が発表された。
マスコミは、このニュースを、毎日ように発信している。
親ならば、子どもの長時間労働、過重労働で、心配になる。体調は?メンタルは?
だとすれば、子どもの店舗、職場は大丈夫だろかって、心配になるだろう。
「働き方改革実行計画」で同一労働同一賃金や、女性や若者・高年齢者・外国人人材など多様な人材が活躍できる環境整備など実行計画が検討テーマとして挙げる領域は多岐にわたる。
その中でも、長時間労働、過重労働の是正や柔軟な働き方の実現に向けた環境整備等は、既に多くの企業で喫緊の課題だ。
みなさんの、店舗ではどうか?
改革に向けて、実行されているかだろうか?
今後、時間外労働の上限規制導入など法改正を含めた取り組みを推進する方針であり、職場、店舗としても働き方を取り巻く変化に対応するための対応策が求められる。
一方で、長時間労働の常態化が引き起こす過労死やメンタルヘルス疾患を含む健康面の問題などが、重大な社会問題となっている。
眠れぬ夜を、いくつも越えた、親(父・母)もいるだろう。
2016年10月に公表された「過労死等防止対策白書」、電通の過労死事件報道等により労働基準監督官による監督指導も強化されている。
あなたも、感じていないか?
長時間労働・過重労働に対する社会的な問題認識は一層高まっている。
よって、見直しは、急務だ。
2-2 理由2 親は、得体のわからないものが、子どもの給与から控除されていることを、理解できない
給与明細書で「福利厚生費2,000円」との明示。要するに、給与から「2,000円」が引かれている。。
この2,000円の控除、ってなんだ。親ならば、気になるはずだ。
この「福利厚生費2,000円」控除、労働基準法では、どう考えれば、いいのか?
解説しょう。
会社は、パート社員に対し、賃金の全額を支払わなければならない。これは労働基準法【全額払いの原則、労基法24条1項本文】で明らかだ。
違反した場合には30万円以下の罰金に処せられる旨の罰則規定もある(同法120条1号)。
しかしながら、一定の場合には、賃金の一部を控除して支払うことができることが認められている(労基法24条1項ただし書き)。
認められる場合は、次の2つの方法で運用することが、不可欠だ。
①まずひとつ目は、法令で賃金からの控除についての定めがある場合だ。例えば、給与所得税の源泉徴収(所得税法183条)、労働保険料や社会保険料の控除(厚生年金保険法84条、健康保険法167条、労働保険徴収法32条など)などだ。
②次に当該事業場の過半数労働組合があればその労働組合、過半数労働組合がなければ労働者の過半数代表者との間で、賃金の一部の控除について、書面で協定(以下、賃金控除協定)した場合だ。
この協定の締結で、会社は賃金から一部控除をしても、全額払いの原則違反とはならない。
よって罰則の適用を受けることも、強行法規違反として違法無効とされることもない。
賃金からの一部控除によりパート社員に賃金支払義務を免れるためには、一部控除することについて私法上の根拠が必要である。
それは、何か?
ズバリ!労働協約または就業規則に根拠規定、対象パート社員との合意、相殺(民法505条1項)を適法になし得ることが必要だ。また過半数労働組合または過半数代表者との書面協定のなかで、労働組合費や福利厚生関連費等の賃金控除の明示があるならば、賃金控除は可能だ。
説明はさほど難しくない、だろう。
2-3 理由3 親は、子ともの労働条件が明示されていないのは、不安である。
労働契約を結ぶときには、毎月の賃金、労働時問、休憩時問、休日、年次有給休暇、残業の有無など、あらかじめ決めておかなければならない。
なぜなら、口頭で済ませてしまうと、後に「言った、言わない」のトラブルのもとに、なるからだ。
そこで、トラブルを防ぐため、労働基準法第15条は労働条件を明らかにすることを義務付けている。
書面で明示するべきことは、次の6事項だ。
①労働契約の期間
②期間の定めのある労働契約を更新する場合の基準
③仕事をする場所、仕事の内容
④仕事の始めと終わりの時刻、残業の有無、休憩時間、休日・休暇、就業時転換(交替制勤務のローテーション等)
⑤賃金の決定、計算と支払いの方法、締切りと支払いの時期
⑥退職(解雇の事由を含む)
なお、「書面」については、「様式は自由でよい」とされている(平11. 1.29 基発45)。
労働条件通知書の例は、次のとおりだ。
この労働条件の書面明示は、決して怠ってはならない。
厚生労働省、労働局でもモデル書式が公開されている。チェックしておこう。
ステップ3=具体的な、向き合い方
労働契約は、就業規則等に基づく会社とパート社員との間での契約だ。
疑義がある場合には、当事者間で話し合うことが問題解決への「基本スタンス」である。
3-1 問題解決への「基本スタンス」
まず頻繁にクレームを寄せる従業員の親に対しては、この「基本スタンス」を伝えることだ。
同時に、職場、店舗も研修を始める。これは職場、店舗の研修は就業規則等の労働条件にのとった合理的なものにすることは、忘れてはならない。
なぜならば、従業員の親族から毎月のようにクレームの対応で追われることは、通常の業務遂行を阻害されることになるからだ。
ストレートに会社として「迷惑行為として看過できないこと」を伝えるべきだ。
例えば、繰り返し親(父・母)からのクレームに対して、今後は、ご遠慮いただくよう、話をすることだ。
ここは押えておこう。
3-2 親(父・母)に伝えるべき、5つのこと
それでは具体的に、何を伝えればいいのか。具体的に言えば次の5点である。
➀ 会社とパート社員の関係は労働契約である。ゆえに問題解決も当事者間の「使用者」と「労働者」で行うこと。
➁ 上記➀により、原則、第三者が介入すべき余地はないこと。
③ 会社がパート社員への業務指示は、就業規則等に基づく業務上の必要性で合理性かあること。
④ 正当な業務上の指示に従わない場合には、就業規則等の懲戒等の罰則により、労働契約の解除適用の可能性があること。
⑤ 過度のクレームは、会社の円滑な業務遂行を阻害することとなる。迷惑行為として認識せざるを得ないこと。
3-3 それでも、クレームがやまない場合
しかし、それでも親(父・母)からのクレームがやまない場合、過去からのクレームを、いつどのような内容が親からあったのか、そのクレームへの対応に会社、職場、店舗で時間を要したのか等を事実として記録をすることだ。
ケースにより弁護士等専門家に相談するなど法的手段も視野に入れる必要がある。
ただし、この対応は、会社として適正な労務管理を行っていることが前提だ。
なおサービス残業、長時間労働、過重労働など労務管理上の問題が会社、職場、店舗にある場合には、意見を真摯に受け止め、是正を図るべきことは言うまでも、ない。
3-4 パート社員との話し合いで、解決を目指す。伝えるべき7つのこと
繰り返しになるが、会社とパート社員の問題は、当事者間で解決すべき性質のものである。
親(父・母)からのクレームを絶つためには、可能な限り本人との間で解決を図ることが得策である。
すでにクレームが顕在化しているのであれば、パート社員本人と話し合い、問題解決を図ることが必要になります。
伝えることは、7つだ。
➀ 親からのクレームの頻度・内容の事実を本人に伝えること。
➁ クレームに関連し、本人から親にどのような話をしているのかを確認すること。
③ 本人から親への伝え方・本人の認識等について、問題があれば会社から本人に指導すること
④ クレーム対応に、会社として労力を使っている事実を伝えること。
⑤ 今後、同種の相談・クレームは原則本人からのみ受け付けることを伝えること。
⑥ 苦情処理のための相談窓口を案内し、利用が可能を伝えること。
⑦ クレームが収束できない場合、法的手段に訴えることも辞さない旨を伝えること。
ステップ4=パート社員との話し合いで、解決を目指す。今日から実践すべき、2つのこと
みなさんの会社、職場、店舗でも、ある日、突然今回のような事態に直面することが予想される。
なぜならば、雇用形態が多様化し、様々な従業員と仕事をすることになるからだ。
そのため今後は、状況の変化を踏まえて、組織防衛のために必要な規則・規定等のルールを明確化しておくことが必要である。
パート社員との労働契約で考え、今日から実践することは、次の2点だ。
1点目:就業規則に会社として、従業員(パート社員)に対する業務指示等のルールを明記すること。
2点目:入社時、膝を突合せて説明をし、労働契約の当事者としての意識を持たせること。
最後に、従業員の親(父・母)に対しても、コミュニケーションが少ないと会社、職場、店舗に不安・不満を抱く可能性がある。
したがって、飲食業・外食産業の会社は、業務内容・店舗ニュースなどをニュースレターとし親族に配信し、理解を求めることも必要だ。
あなたの会社の、改善の一助になれば幸いである。
最後まで、お付き合いいただき、ありがとうございました。
渋谷の社会保険労務士の高山英哲でした。
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