渋谷区の社会保険労務士です。
こんにちは、高山英哲です。
あなたと、今回学ぶことは「無期転換ルール」である。平成25(2013)年4月1日に改正労働契約法が施行された。
この無期転換ルールにより、有期労働契約が通算5年を超えて反復更新された場合、有期契約労働者の申込みにより、 期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換されることとなる。
改正労働契約法が施行されてから平成30(2018)年4月1日で5年が経過した。今後、無期転換の本格的な発生が見込まれる。それゆえ就業規則や社内制度の検討・整備等を行う必要がある。
これを、お読みの、あなたは「無期転換のルール」の知識はありながらも、何から手をつけていいかと、わからない。。こんな不安を、お持ちではないだろうか?
そこで、今回は、あなたと、この「無期転換ルール」、会社がすすむべき道を、考えることとする。
ステップ1= まず「無期転換ルール」の正体を、明らかにする
そもそも「無期転換ルール」とは、何か。早速、解説しょう。
「無期転換ルール」とは、平成25年4月1日に施行された改正労働契約法18条がある。
これによると、有期労働契約が反復更新されて通算5年を超えたときに、労働者の申込みによって企業などの使用者が無期労働契約に転換しなければならないルールだ。
1-1 雇い止めの不安解消
有期労働契約で働く人の約3割が、通算5年を超えて有期労働契約を繰り返し更新しているのが実態である。こうしたなかで、雇止めの不安の解消が課題だ。
課題を解消する目的で導入されたのが「無期転換ルール」であり、労働者の雇用の安定を図る狙いがある。
1-2 通算で5年を超えて反復更新
同一の使用者との間で、有期労働契約が通算で5年を超えて反復更新された場合は、労働者の申込みにより、無期労働契約に転換する。通算契約期間のカウントは、平成25年4月1日以後に開始する有期労働契約が対象である。
なお平成25年3月31日以前に開始した有期労働契約は通算契約期間に含めない。ここは、押さえておこう。
1-3 有期労働契約者は全国で約1,500 万人
有期労働契約で働く人は全国で約1,500 万人だ。その約3割が通算5年を超えて有期労働契約を反復更新している実態としてある。それゆえに雇止めの不安の解消、処遇の改善が課題となっている。
そのため、有期契約労働者の無期契約化 を図り、雇用を安定化させる目的で、平成25年(2013年)4月1日に改正労働契約法が施行た。
1-4 有期労働契約が5年を超えて反復更新
無期転換ルールは、同一の使用者(企業)との間で、有期労働契約が5年を超えて反復更新された場合、有期契約労働者(契約社員、パートタイマー、アルバイトなど)からの申込みにより、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換されるルールだ。
契約期間が1年の場合、5回目の更新後の1年間に、契約期間が3年の場合、1回目の更新後の3年間に無期転換の申込権が発生することになる。
1-5 労働契約法第18条 有期労働契約の期間の定めのない労働契約への転換
読み飛ばしてもいいが、条文にも触れていこう。
1項
同一の使用者との間で締結された二以上の有期労働契約(契約期間の始期の到来前のものを除く。以下この条において同じ。)の契約期間を通算した期間(次項において「通算契約期間」という。)が五年を超える労働者が、当該使用者に対し、現に締結している有期労働契約の契約期間が満了する日までの間に、当該満了する日の翌日から労務が提供される期間の定めのない労働契約の締結の申込みをしたときは、使用者は当該申込みを承諾したものとみなす。この場合において、当該申込みに係る期間の定めのない労働契約の内容である労働条件は、現に締結している有期労働契約の内容である労働条件(契約期間を除く。)と同一の労働条件(当該労働条件(契約期間を除く。)について別段の定めがある部分を除く。)とする。
2項
当該使用者との間で締結された一の有期労働契約の契約期間が満了した日と当該使用者との間で締結されたその次の有期労働契約の契約期間の初日との間にこれらの契約期間のいずれにも含まれない期間(これらの契約期間が連続すると認められるものとして厚生労働省令で定める基準に該当する場合の当該いずれにも含まれない期間を除く。以下この項において「空白期間」という。)があり、当該空白期間が六月(当該空白期間の直前に満了した一の有期労働契約の契約期間(当該一の有期労働契約を含む二以上の有期労働契約の契約期間の間に空白期間がないときは、当該二以上の有期労働契約の契約期間を通算した期間。以下この項において同じ。)が一年に満たない場合にあっては、当該一の有期労働契約の契約期間に二分の一を乗じて得た期間を基礎として厚生労働省令で定める期間)以上であるときは、当該空白期間前に満了した有期労働契約の契約期間は、通算契約期間に算入しない
ステップ2= 無期転換ルール 知っておきたい5項目
ステップ1で、「無期転換ルール」の正体が明らかになった。あなたも理解できただろう。
次に第2ステップは、よくある疑問、誤解を解消していく。
Q1.契約期間の通算は?
まず初めに、無期転換ルールの適用に当たって、契約期間はいつから通算されるかだ。
通算契約期間は「平成25(2013)年4月1日以降に開始した有期労働契約から算定(カウント)する」。
例えば、平成24(2012)年6月1日から1年間の有期労働契約を締結し、更新を繰り返している者は、平成24(2012)年6月1日~平成25(2013)年5月31日の契約期間はカウントされず、平成25(2013)年6月1日に開始した有期労働契約からカウントされることとなる。
Q2.自動的に無期労働契約に転換となるのか?
2つ目は、通算5年を超えたら、自動的に無期労働契約に転換されるかだ。
法律上は、契約期間が通算5年を超えた労働者が「申込み」をした場合に、無期労働契約が成立する。(無期労働契約の開始時点は、申込時の有期労働契約が終了する日の翌日。)
そのため、無期労働契約への転換にあたっては、労働者ご自身で「申込み」を行うことが必要だ。なお、会社によっては自動的に無期転換される制度を設けている場合もある。
Q3.すでに5年超で勤めている場合
すでに5年超勤めている場合、いつでも無期転換申込権を行使することはできるのか。
平成25(2013)年4月1日以降に開始した有期労働契約の通算契約期間が5年を超える場合、その契約期間の初日から末日までの間、いつでも無期転換の申込みをすることができる。
また、無期転換の申込みをせずに有期労働契約を更新した場合、新たな有期労働契約の初日から末日までの間、いつでも無期転換の申込みをすることができる。通算契約期間は、平成25(2013)年4月1日以降に開始した有期労働契約から通算する。したがって5年を通算する「起算点」には、注意が必要だ。
Q4.部署異動で職種等が変わっている場合
同じ会社で働いていて、部署異動により何度か職種や職務内容が変わっている。このような場合でも、契約期間は通算されるか。
無期転換申込権は、「同一の使用者との間」で契約を更新し、通算して5年を超えて勤務した場合に発生する。
つまり、継続して同じ会社に勤務していれば、その間に職種や職務内容が変更されたり、A支店からB支店に異動した場合であっても、契約期間は通算されることになる。
※「同一の使用者」とは、事業場単位ではなく、労働契約締結の法律上の主体が法人であれば法人単位で、個人事業主であれば当該個人事業主単位で判断されます。
ステップ3=あなたが、今日から始めるアクション「無期転換ルール」の対策と運用
これまで説明した「無期転換ルール」。平成25年4月1日より改正労働契約法が施行されたからには、平成30年4月から本格的に無期転換への申込みの発生が見込まれる。
ここまで読んだあなたは、知識を得た。あなたの会社は、「無期転換ルール」運用は、大丈夫だろう。
繰り返しになるが、整理すると無期転換ルール対応は次の3つである。
①円滑な導入のためにどのようにして労使双方にとって納得性の高い制度を構築するか
②無期転換労働者の役割や責任の範囲について、従来の「正社員」や「有期契約労働者」と比べ、どう設定するか
③就業規則といった既存の規定書類の整備など、様々な検討、対応が必要だ。
これらの準備には一定の時間を要するため、準備と対応は早期に行うべきだ。
運用は、ステップバイステップで実行すれば、あなたの会社もできるだろう。
3-1 有期社員の実態調査をする
有期社員の人数、職務内容、月や週の労働時間、契約期間、更新回数、勤続年数(通算契約期間)、今後の働き方やキャリアに対する考え、無期転換申込権の発生時期などを把握をする。
会社の就業規則において「有期社員の定義が明確になっているか」「正社員、有期社員の労働条件等が就業規則、給与規定等においてどのように規定されているか」をチェックする。
3-2 計画的な運用を確立する
あなたは、第2ステップで、有期社員の計画的な活かし方を考える必要がある。
一般的に「正社員」とは、無期契約労働者を指すことが多く見られた。有期社員が無期転換した場合、転換後の雇用区分に応じ、従来の「正社員」と役割や責任を明確にしておかないと、トラブルが発生する。中長期的な視点を持ち、効果的な人事管理を行うために整理方法はこうだ。
1 仕事の内容を分類する。
有期社員が従事している仕事を、基幹的な業務/補助的な業務と、業務の必要性が一時的/恒常的の2つの観点で分類する。
こうすることで、業務の必要性が恒常的な仕事は、いわゆる「正社員」や雇用の定めのない無期転換社員などの無期労働契約の社員が担うことが求められることになる。
2 有期社員の転換後の役割の確立
人材を有効に活用する。会社の有期社員一人ひとりをそれぞれどのように位置づけ、活用していくかがポイントだ。
無期への転換方法は、次の3タイプである。
①雇用期間の変更
契約期間のみを有期契約から無期契約へ変更する転換する。
賃金や労働時間など、その他の労働条件は変更されない。無期転換前と比べ、職務や処遇を変更する必要がない社員が対象となる。
②多様な正社員への転換
いわゆる「正社員」と比較して、勤務地や労働時間、職務などの労働条件に制約を設けた正社員(「多様な正社員」)への転換。
多様な正社員では、転勤がない、残業時間に制限を設けるなどにより、働き方に制約がある社員が働き続けやすいなどのメリットがある。
③正社員への転換
業務内容に制約がなく、入社後定年に達するまで勤務することを想定した、「正社員」「総合職」等と呼ばれるいわゆる「正社員」への転換。
キャリアアップを図り、中核的な労働力として会社に貢献したいと考える社員が活躍できる。
雇用している有期社員やこれから採用する有期社員を無期転換していく際に、上記の3タイプのいずれかに決定する。
さらに契約期間の変更⇒多様な正社員⇒正社員へ登用していく制度を設けるなど、中長期的な視点を持ち、その後の登用のあり方をあらかじめ想定していくことも大切だ。
あなたの会社の、改善の一助になれば幸いである。
最後まで、お付き合いいただき、ありがとうございました。
渋谷の社会保険労務士の高山英哲でした。
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