渋谷区の社会保険労務士です。

高山英哲こんにちは、高山英哲です。

あなたと、今回学ぶことは「定額残業の通達」である。

平成29年7月31日付け基発00731第27号「時間外労働等に対する割増賃金の解釈について」の通達が出た。

定額残業代を運用する会社の人事総務担当者はチェックをする必要が、ある。

これを、お読みの、今のあなたは「定額残業制度で運用したい」と感じながらも、裁判所、労働基準監督署から「違法」「無効」と指摘されたらどうしょうか?

こんな不安を、お持ちではないだろうか?

そこで、今回は、あなたと、この通達に基づき、会社がすすむべき道を、考えることとする。

最後まで読んでいただき、やるべきことを、実践すれば、驚くほどの成果を得られるはずだ。

 

 

ステップ1= まず「定額残業代」の正体を、明らかにする

そもそも「定額残業代」とは、何か。

初耳の方のために、解説しょう。

「定額残業代」とは、時間外労働割増賃金(休日労働割増賃金、深夜労働割増賃金を含むこともあります)を一定額で支払うという制度だ。

とはいえ、労働基準法、労働諸法令で「定額残業代」の法的定義は、ない。

会社によっては「定額残業代」の名称のほか、「固定残業代」や「営業手当」等を用いる場合もある。

 

1-1 「定額残業代」よくある、誤解とは

 
よく言われていることであるが、「定額残業代」には、誤解がある。

その誤解とは、何か。

「定額残業代」を支払えば、何時間残業しても、一切残業代を支払わなくてもいい、ということではない。

要するに、割増賃金が定額残業手当額を上回ったときは、差額支払の「義務」がある、ということだ。

定額残業代を支払っている労働者に対し法律上支払うべき割増賃金が定額残業手当額を上回ったときは法定額に達するまでの差額を支払わなければ、ならない。

例えば、「定額残業代」を5万円と定めれば、仮に法定の割増賃金額が5万円を上回るときでも5万円の支払いで足りるということでは、ない。

なぜならば、労働者が法定の労働時間を超えて行った、時間外労働の長さに応じて、割増賃金を支払うこととなっている、からだ。

これは、あなたも、理解できるだろう。

 

1-2 「差額」を支払うことの、意味

そこで「定額残業代」の「差額」払いの、実例を考えてみよう。

仮に、「定額残業手当」を「月額5万円」とした場合。

その月の時間外労働に対し法律上支払うべき割増賃金が5万円を下回るときは、定額残業手当である5万円を支払う。法律上支払うべき割増賃金が5万円を上回るときは「定額残業手当」5万円のほか法定割増賃金額との「差額」を支払うということになる。

次のような質問を受けることが、ある。

具体的に、説明しょう。

ある月の法定の割増賃金が6万円、次の月の法定の割増賃金が4万円。差し引き同じだ。

だからといって、6万円となった月に1万円の「差額」支払いな無し、とはならない。

なぜなら、労働基準法24条2項は割増賃金について、月ごとに決裁し支払うことを求めているからだ(毎月払いの原則)。

当該月の時間外労働が少なくて法定の割増賃金額が5万円より相当に下回っている場合でも、5万円を支払うというのが「定額残業代」制度の特徴である。もし差し引くのであれば「定額残業代」とはいえない。

そこで、セールス手当という名称で、残業手当の定額払いを行っていた判例がある。

一緒に、考えてみょう。

 

1-3 定額残業代の判例【関西ソニー販売事件】を、斬る

あなたと、一緒に考える、定額残業代の判例は【関西ソニー販売事件】である。

昭和63.10.26大阪地裁判決の要旨は、こうだ。

労働基準法37条は時間外労働等に対し、一定額以上の割増賃金の支払いを、使用者に命じている。

同条所定の額以上の割増賃金の支払いがなされるかぎり、その趣旨は満たされ同条所定の計算方法を用いることまでは、要しない。

ゆえに、その支払い額が法所定の計算方法による割増賃金額を上回る以上割増賃金として一定額を支払うことも許される。

しかしながら、現実の労働時間によって計算した割増賃金額が一定額を上回っている場合には、労働者は使用者に対してその差額の支払いを、請求することができる。(関西ソニー販売事件 昭和63.10.26大阪地裁判決)

判例のとおり、「差額」は、支払わなければ、ならない。

 

 

 ステップ2 本当に解決すべき「定額残業代」の問題は、何か

ステップ1で、「定額残業代」の正体を明らかにした。あなたも理解できただろう。

話を第2ステップで、元に戻そう。

ここでは、問題を探っていく。平成29年7月31日付け基発00731第27号「時間外労働等に対する割増賃金の解釈について」の通達も明らかにしていく。

通達は「時間外労働等に対する割増賃金を基本給や諸手当にあらかじめ含めて支払っている場合には(平成29年7月7日の最高裁判例)を踏まえ、次のことに留意する必要がある」と、いうことだ。

要旨を、端的に触れる。

 

2-1 書面等の明示で明確に区別できる

基本賃金等の金額が労働者に明示されていることを前提にする。

例えば、時間外労働、休日労働及び深夜労働に対する割増賃金に当たる部分について、相当する時間外労働等の時間数又は金額を書面等で明示などをする。

こうすることで、「通常の労働時間の賃金に当たる部分」と「割増賃金に当たる部分」とを明確に区別できるようにしているか確認すること。

 

2-2 差額を追加して支払う

割増賃金に当たる部分の金額が実際の時聞外労働等の時聞に応じた割増賃金の額を、下回る場合にはその「差額を追加して所定の賃金支払日に支払わなければならない」。

そのため、使用者が「労働時聞の適正な把握のために使用者が講ずべき描置に閤するガイドライン」(平成29年1月20日付基発0 12 0第3号)を遵守し、労働時間を適正に把握しているか確認すること」が必要である。

 

2-3 時聞外労働等に対する割増賃金と基本給と諸手当の関係

窓口での相談や集団指導等のあらゆる機会を捉えて「時間外労働等に対する割増賃金を基本給や諸手当にあらかじめ含めて支払っている場合には(平成29年7月7日の最高裁判例)を踏まえ、次のことに留意する必要がある」を踏まえ確認すべきとした内容について積極的に周知すること

監督指導を実施した事業場に対しては、時聞外労働等に対する割増賃金を基本給や諸手当にあらかじめ含めて支払っているか否かを確実に確認する。

問題が認められた場合には、是正勧告を行うなど必要な指導を徹底すること。

この通達から、私たちに言いたいことは、ズバリ!2点だ。

基本給と定額残業代の「明確区分」と、追加での「差額支給」である。

 

ステップ3=定額残業代 運用の方程式

通達は繰り返し読んだ。でもね。。最高餓判例を前提としているから。

じゃぁーこの通達から、私達が読み切ることは何か。

現在の裁判から、割増賃金と定額残業代との「差額」を毎月支払っていない場合、定額残業代制度を「否定される」ことが定着している。

ゆえに、私達が気になるのは、何か?

それは、労働基準監督署も、裁判所と同じように、定額残業代制度を「否定する」「否定しない」に、動くかだ。

こればっかりは、わかならない。

特に11月は、過重労働解消キャンペーン月間だ。

監督署の動向は、やっぱり、気になる。

定額残業代を運用している会社、人事総務担当者のあなたは、しばらく眠れない日々が続くかもしれない。。。

監督指導に対しては実際の割増賃金と定額残業代との差額を支払う等の対応(対象期聞、金額など)をすることになると考えられるが、所轄労働基準監督署の監督官によっても、対応は異なるであろう。

 

ステップ4=あなたが、今日から始める、アクションとは

通達は「基本賃金等の金額が労働者に明示されていることを前提に」と記載している。

基本給等の労働条件を明示していない事例については、定額残業代制度が記載された就業規則等があっても定額残業代制度を全て否定する可能性がある。

とはいえ実態として、定額残業代制度そのものを全否定して監督指導する事例は少ないと思いますが。。今までは。。

この通達を契機に、基本給と残業代の明確な区分がない、追加で差額を支払っていない、定額残業代の明示がない、雇用契約内容として定額残業代が含まれていない場合等々々々々。。。定額残業代制度そのものが無効であると判断される可能性がると、いえる。

思い当たったら、今からでも、整備することだ。

そう!今すぐだ。

 

4-1 定額残業代の「明示」


これまでの最高裁判例は「通常の労働時間の賃金に当たる部分と時間外及び探夜の割増賃金に当たる部分とを判別することl(高知県観光事件最高裁平成6乍6月13日判決)ができるかどうかを定額残業代が有効になるための要件の一つとして挙げいた。

今回の通達では、それを一方進めて「判別」させるために「相当する時間外労働等の時間数又は金額を書面等で明示するなど」を要求している。

ここまで、要求してくる理由は、何か。

その答えは「定額残業代の誤った運用が、一向に減らない」からだ。

 

4-2 桜井裁判官の「補足意見」とは、何か

テックジャパン事件最高裁平成24年3月8日の桜井裁判官補足意見を意識ていると、いえる。

あなたも、桜井裁判官の「補足意見」はみたことが、あるかもしれない。

繰り返し言っているが、労働条件通知書や労働契約書において定額残業代に相当する残業代の金額又は時間数を明示することは最低限必要だ。

理想を言えば給与明細において毎月の定額残業代の金額と時間数を明示すれば問題がないだろう。

問題になるのは就業規則や労働条件通知書に定額残業代の記載はあるが、給与明細に定額残業代の記載が無い場合です。

例えば就業規則には「基本給には30時間の時間外割増賃金が含まれる」とあるが、給与明細には基本給のうち、どの部分が定額残業代に当たるのか何の記職も無い場合だ。

監督官によっては「明示」されていないとして定額残業代制度が無効であることを前提に監督指導を行う可能性がある。

労働条件、定額残業代の「明示」について注意する必要があると、いえる。

 

 

4-3 こっそり、解説する 5つの【最強の実務】

最後に、あなたに、こっそり解説する、5つの最強実務だ。

端的説明するから、最後まで、読んでほしい。

まず、最初は、労働契約書での基本給と定額残業代(手当)の明示例を紹介する。

労働契約書への明示例

定額残業代の明示」例です。

 

続いて、2つ目、給与明細書例だ。

例えば、「時間設定」で40時間分と定めた場合,時間外労働時間数と手当額を給与明細に記載する必要があります。また,手当欄は,「定額残業代」と「40時間を超える残業代」で別の欄(時間外を設けるのがわかるようにしてください。

(例):時間外労働割増賃金(定額部分):52,000円(40時間相当分)
   :時間外労働割増賃金(差額部分): 6,370円 (5時間相当分)

定額残業代運用の給与明細書

 

さらに3つ目、定額残業代の設計方法だ。

誤らないように注意をしてください。繰り返しますが、時間外労働割増賃金の単価が異なれば見込まれる時間外労働時間数が同じでも定額残業代は異なります。

定額残業代の説例

定額残業代の説例

定額残業代の説例■計算方法

 

4つ目、就業規則の記載例だ。

定額残業手当の就業規則(賃金規程)記載例

定額残業手当の就業規則(賃金規程)記載例

就業規則の「定額残業手当」例

 

最後の5つ目。定額残業代に関する同意書」例だ。

不利益変更に該当する場合は「定額残業代に関する同意書」の締結は不可欠です。従業員に説明をして、同意書にサインをもらって。

 

 

あなたの会社の、改善の一助になれば幸いである。

最後まで、お付き合いいただき、ありがとうございました。

渋谷の社会保険労務士の高山英哲でした。お客様皆様の声
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