渋谷区の社会保険労務士です。
こんにちは、高山英哲です。
あなたと、今回学ぶことは「有期雇用者を65歳で契約不更しない、上限規則の雇止めが有効」とされた判例である。
端的にいえば、日本郵便と有期雇用契約社員9名が満65歳で雇止めをされた事案だ。
日本郵便の有期雇用契約社員の就業規則および労働協約ではこう書いてある「満65歳に達した場合には、それ以後の契約更新を行わない」。
それでも、この雇止めは「無効だ!」って。有期雇用契約社員9名は、損害賠償請求した。
あなたは、どう考えるか?
労働契約法第7条、労働契約法第10条、雇用対策法第10条(募集及び採用における年齢にかかわりない均等な機会の確保)、高年齢者等の雇用の安定等に関する法律第9条(高年齢者雇用確保措置)を考慮することとする。
早速、私たちで「有期雇用者を65歳で契約不更しない、上限規則の雇止めが有効」を一緒に考えていく。
審判 | 二審(高等裁判所) |
裁判所名 | 東京高等裁判所 |
事件番号 | 平成27年(ネ)4778号 |
裁判年月日 | 平成28年10月5日 |
裁判区分 | 判決 |
全文 | 日本郵便事件(東京高等裁判所,平成28年10月5日判決)PDF(Adobe Acrobat) |
1.そもそも「雇い止め」の正体、その姿とは?
そもそも「雇い止め」の正体、その姿とは何か?
ズバリ!雇い止めとは「有期労働契約が期間満了で終了した際、使用者が契約の更新を拒絶することをいう」をいう。
多くの場合は契約社員やパートタイマーなどが対象となる。
企業と従業員との間であらかじめ期間を定めて結ばれる労働契約書または労働条件通知書には、期間の定め、【有り、無し】が明示されいるはずだ。
あなたの会社では、どうか?
今すぐ、チェックしてみてほしい。
「解雇」と「雇い止め」の違いは、よく議論されている。引き続き、解説しょう。
1-1 じゃぁー「解雇」の正体、その姿とは?
次の「解雇」の正体、その姿だ。
「解雇」とは、契約期間の定めがない労働契約で、使用者が一方的に労働契約を終了の意思表示を行うことだ。
労働契約が成立していれば就労開始前の解除(いわゆる内定取り消し)も理論上は解雇だ。
あなたの会社の就業規則をみてほしい。
服務規律の条文で、こう書いてあるはずだ。「従業員は、会社の指示命令を守り、職務上の責任を自覚し、誠実に職務を遂行しなければならない」。
1-2 これだけは、押さえておきたい「雇い止め」と「解雇」共通点と違い
突然の解雇通告!言い渡されると、その後、従業員は生活できない。
よって裁判例は従業員を保護するため、解雇権の行使を制限を付した。
あなたも、よく見るでしょう。ニュース、新聞、ネットで。
「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合、解雇権を濫用したものとして解雇を無効」の文言を。
もう少し、突っ込んで説明すると、この判例法理は労働契約法16条に定められている。
一方、有期労働契約において期間満了に伴い契約を終了する場合は、どうか?
あらかじめ「契約期間」が決まっているから、雇止めがあっても「従業員が害される」ことはない、と考えられれる
しかし、この考えは違う。
なぜか?
あなたも考えてほしい。
ヒントは、雇止めも解雇の共通することだ。
雇止めも解雇も、共通することは「従前の労働契約を名実ともに終了させようとする使用者の意思表示」だ。
それゆえ、有期労働契約でも、従業員が使用者から支払われる賃金を生活の糧としている実態は、同じだ。
有期契約労働者は、期間満了後はどうなるのか?契約を更新してもらえるのか?といった不安を抱えながら日々仕事を続けることになる。
あるいは、何度も契約更新が行われるうちに、きっと次回も更新してもらえるだろうという期待感が生ずる。
1-3 裁判例から、学んで
こうしたことから、不安感や期待感を保護するため裁判例では、次の3点の考えから労働者の雇用継続を保護する考えが培われてきた。
●形式的に契約が終了したことだけにとらわれない。
●雇止めに至るまでの労使間の契約の実態を見る。
●期間満了時の更新拒絶をいわば契約途中の解雇と同様にとらえる
つまり「解雇に関する法理の類推適用」だ。
平成24年8月公布の改正労契法で、これら判例法理は法定化された(労契法19条、「雇止め法理」の法定化)。
したがって、理論的に雇止めと解雇は別物である。
しかしながら実態的に見れば「使用者の一方的意思表示により契約を打ち切る点」ゆえに「法により一定の制限を受けている点」が共通している(同法16条、19条)といえる。
2.こっそり、教える、3つの争点
本事案の主たる争点は、3つだ。
①雇止めが解雇権濫用法理の類推適用により無効なのか。
②65歳を上限した就業規則に合理性はあるか。
③65歳上限の不利益変更の合理性はあるか。
①は前述で説明したとおりだ。
「雇い止め」と「解雇」の違いは、あなたが理解しているとおりだ。
裁判所も「上限規則等に基づく更新の拒絶は、解雇権濫用法理とは「別」の雇用契約の終了事由として捉えるべき」と判断した。
なお補足として本事案は「雇止め法理」を法定化した現労契法19条施行前に「雇止め」がなされた。よって同条項の適用の有無に関する立て付けとなっていない。
②については、どうか。判断はこうだ。
上限規則のような定めは「会社の経営判断に基づき置かれるものであり、その内容が違法なものであったり、労働者の権利、利益を不当に制限するものであるとの事情がない限り、合理性を肯定することができる」
さらに、会社が上限規則制定の理由は次の2点についても、合理性があるとし、内容も相当性があるとした。
「1)業務に体力や持久力を要するものが多い、よって高齢者の就労で事故等が発生するの懸念したこと」「2)組織の新陳代謝を促進する必要があったこと」
最後の➂だ。要する3点、こういうことだ。
「1)不利益の程度は、内容上の観点、法的保護の必要性観点からも、限定的だ」
「上限規則を制定することの必要性が認められる。内容も相当なものである」
「代価措置その他労働条件の改善状況、労働組合等の交渉の経緯、他の従業員の対応、一般的状況等を合わせ考慮した結果、労働条件を変更する合理性が認められる」
したがって不利益変更が有効である旨判断した。
3.「解雇権濫用法理」と「雇用契約の終了」を理解する
あなたは、3つの争点が理解できた。このことから、あなたは考えるもしれない。
「確かに、雇止めの事案だけど、有期雇用契約の「年齢上限規則」を適用した雇止めだ」って。
そのとおりだ、あなたの考えは、正しい。
さらに、付け加えると「解雇権濫用法理(現労契法19条)を適用し判断した事案ではない」ということだ。
有効性についても、就業規則の合理性や就業規則の不利益変更の合理性の観点から検討する必要がある。
つまり、私がいいたことは、上限規則の適用という「解雇権濫用法理」と、「雇用契約の終了」の正体は、違うということだ。
混乱したら、再び「雇い止め」と「解雇」共通点と違いを、一読していただければ幸いである。
最後までお読みいただきありがとうございました。
審判 | 二審(高等裁判所) |
裁判所名 | 東京高等裁判所 |
事件番号 | 平成27年(ネ)4778号 |
裁判年月日 | 平成28年10月5日 |
裁判区分 | 判決 |
全文 | 日本郵便事件(東京高等裁判所,平成28年10月5日判決)PDF(Adobe Acrobat) |
渋谷の社会保険労務士の高山英哲でした。
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