渋谷区,社会保険労務士の高山英哲です。

みなさん、こんにちは。高山英哲

今回は「うつ病発症者の休職期間満了による自然退職の有効、無効が争われた事例」である。

具体的に言うと、うつ病での休職期間満了を理由に自然退職となった元従業員が、うつ病の起因は「過重な業務等」であると主張。

加えて休職期間満了前に就労可能だったため、労働契約上の地位の確認と就労可能となった時点以降の賃金支払いを求めていた。

東京地裁は本判決は、うつ病の発症について業務起因性を認めなかった。

さらに休職期間満了までに病状が回復していたとは認められないとして、元従業員の上記各請求をいずれも棄却した。

私はこの判決「イエス」です。

  稲穂事件 
審判一審(地方裁判所)
裁判所名東京地方裁判所
事件番号平成25年(ワ)6593号、14138号
裁判年月日平成29年1月26日
裁判区分判決
全文認証サービス会社S事件(東京地方裁判所平成29年1月26日)PDF(Adobe Acrobat)
根拠条文
労働基準法 逐条解説(コンメンタール)第19条 (解雇制限)

従業員のうつ病に関する相談が後を絶たない。

うつ病の原因はストレスや体の病気、環境の変化など、生活の中のさまざまな要因が重なって発病すると考えられている。

とはいえ医師だけの意見によって解決できるものではない。

会社は従業員の心の問題もケアーするべきだ。

労務管理の見直し、運用、就業規則の改定を含めた課題に直面している。

あなたの会社でもメンタルヘルス、休職規定など運用する場合、難題を抱えることがあるだろう。

そこで今回は私とあなたとで判例をふまえ、うつ病で休職中の社員の課題。

これを克服する技術を、学んでいく。

 

休職の正体、その姿とは?

言うまでもなく、最初に休職の正体をおさえておくことが非常に重要である。

休職とは、労務不能または仕事ができない事由発生の場合、地位を保有しながら業務を免除するこという。

ゆえに従業員に対して病気休職を命じ職務遂行の継続が困難と判断し、一定期間労働義務を免除し治療への専念義務・復職努力を負わせることになる。

あなたは、こう考えているかもしれない。

「職務遂行の継続が困難って、期間はどのくらい」

説明しょう。

休職に入る前の欠勤は「連続1ヵ月を超える」または「3ヵ月間に断続的に60日以上」に達した場合に判断する会社が、多い。

数年前は休職期間は従業員の勤続年数の長短で決定することが一般的、だった。

中小零細規模企業は短めの期間を設定する傾向だが、企業規模によっても違いも確かに、ある。

考えてみれば不思議ではないが、休職中の賃金を不支給にする。通常これは問題、ない。

 

 

うつ病、休職、自然退職および過重業務の関係を、クリアーにする方法

休職の正体をふまえ、あなたの疑問は、こうだ。

「うつ病の原因、休職の正体は理解できた。じゃぁー、自然退職と過重業務の関係はどうなっているのか?」 

ズバリ!お答えすれば、うつ病、休職、自然退職および過重業務はつながっている。

つながっている経過は次のとおりだ。

①過重業務が原因で、うつ病になった。

②うつ病になって休職した。

③休職満了後、復職できなかった。

④復職できなかったから自然退職になった。

これは従業員の主張だ。

最初に言ったことを思い出してほしい。

考えてみれば当たり前ことだが、うつ病の原因が過重労働だったら、会社責任を問われても仕方がない。

会社責任を従業員が求めてくると労災につながっていくことになる。

かりに労災として認定されたら、労働者は保護される。

つまり私はいいたいことは、こうだ。

うつ病の原因が労災認定されたら休職期間満了で自然退職は有り得ない、ということだ。


過重労働 あなたが対処する道は、2つ

この問題に対処する道は2つだ。

一つ目は、過重労働対策を構築をすることだ。

過労死等防止対策推進法に基づき、2016年10月に「過労死等防止対策白書」が公表され、政府の「働き方改革」では長時間労働の是正が取り上げられている。

これは、あなたもご存知だろう。

さらにメディアで過労死事件が報道で長時間労働・過重労働に対する社会の関心は高くなっている。

ならば今すぐ次の3点を検討しアクセルを踏んで実行へと、移してほしい。

①社内体制の構築。
衛生委員会などを活用し過重労働対策の社内体制を構築する。

②年次有給休暇の取得促進
計画付与制度を検討すること。取得方法も容易なやり方で。

③勤務期間インターバル制度の導入
「勤務間インターバル」とは、勤務終了後、一定時間以上の「休息期間」を設けることで、働く方の生活時間や睡眠時間を確保する。

特に③の「勤務期間インターバル制度の導入は昨今話題となっている。

労働者が日々働くにあたり、必ず一定の休息時間を取れるようにするというこの考え方に関心が高まっているから、本気で取り組むこととしてほしい。

二つ目は、反対にすっぱり、過重労働対策をあきらめること。

「なんだぁーそれ?」

まぁー続いて説明するから、聞いてほしい。

私が言いたいのは、過重労働対策はあきらめて、何もしない、ということではない。

「これもやりなさい、あれもやりなさい、最後はこうだ!」と、私はコンサルをする。

でも経営者をはじめ、人事総務部長も、ウンザリしているはずだ。

もう、知識、考え方の詰め込みは、勘弁してくれよぉーって。

電話帳の厚さと同じくらいの資料を持って、

私がツバを飛ばしながら気合をいれた話、あなたの胸にはおちない、だろう。。。

であれば、明日、1週間後、1ヵ月後でなはない。

あなたが今すぐ、この瞬間、できることは、何か?

その答えは、ズバリ!労働時間についての、意識改革だ。

ドイツ人の労働時間の意識が、参考になる、はずだ。

【なぜドイツの 労働時間は短いのか】
http://www.newsdigest.de/newsde/column/dokudan/6983-1003.html

 

 

うつ病で休職中の社員、休職期間満了での退職の理由

最後に判決にふれる。

裁判所は、疾病の業務起因性と従業員は復職可能について、2点こう言っている

①本件疾病が労働基準法第19条1項の業務上の疾病の場合、休職期間満了の自然退職の就業規則を適用することができない。精神障害の業務上外の判断に当たっては、厚生労働省の「心理的負荷による精神障害の認定基準について」(平23.12.26基発1226第1.以下、認定基準)の考え方に沿って検討するのが相当であるが、疾病の業務起因性を認めることはできない。

②元従業員は復職可能であったと主張するが、労務の提供ができる程度に病状が回復していたと認めることはできない。

したがって就業規則により休職期間満了日の翌日に退職したというべきである。

元従業員の地位確認請求および退職後の期間に係る未払い賃金請求はいずれも理由がない。

 

  稲穂事件 
審判一審(地方裁判所)
裁判所名東京地方裁判所
事件番号平成25年(ワ)6593号、14138号
裁判年月日平成29年1月26日
裁判区分判決
全文認証サービス会社S事件(東京地方裁判所平成29年1月26日)PDF(Adobe Acrobat)
根拠条文
労働基準法 逐条解説(コンメンタール)第19条 (解雇制限)

 

最後までお読みいただきありがとうございました。

社会保険労務士、渋谷区の高山英哲でした
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