渋谷区の社会保険労務士です。

こんにちは、高山英哲です。高山英哲

私たちは仕事の中で、あるいは現場で、ありとあらるゆ難題に直面する。

その難題を解決するために、社会保険労務士という仕事がある。

あなたは、どうか。

課題に対し何をどうすればいいかを、まず考えるはずだ。

そんな中で迷ってしまう事案に直面した。建設業、工事現場でのケンカの事案である。

社員同士が仕事に関する意見の違いから口論になった。

最終的には殴り合いのけんかに発展し従業員が負傷をしたという。

怪我を被った従業員に対して労災保険は、つかえるのか?

このブログを読んでいるあなたの中には「喧嘩と仕事は関係ない、労災は無理でしょう」「自費で治療するべきだ」「喧嘩両成敗だから当事者同士で解決するべきだ」などと考えているかもしれない。

様々な意見があるだろう。

そこで今回は私とあなたで「建設業の工事現場でのケンカ、怪我は労災適用なのか?」答えをみつけていくこととする。

そもそも労災保険の正体、その姿とは

まず、あなたと最初に考えることは労災保険の正体、その姿を考察することである。

「労災でしょう」「現場でのケガで負傷だろう」あなたは、なんとなくわかっている、というような見方、その場での思いつきでで判断しないでほしい。

そもそも「労災保健の正体」とは何か。

説明しょう。

労災保険は、正式名を「労働者災害補償保険」という。

労働者が病気になったり怪我を負ったときの治療費の支給だけでない。

働けない間の所得補償や、万が一死亡したときには遺族に対する年金の支給を行うなど、労働者の保護を図るための保険制度である。

あなたは理解していると思うが、事業主には、労働基準法に基づく労働者の災害補償義務がある。よって任意保険ではない。これは理解できるだろう。

労災保険の限界とは?仕事中の負傷は「全て労災」は誤った考え

ここまで紹介したきたことで、あなたは労災保険の正体は理解できた。

ここからは実務を含め深く説明していく。

まず建設業の工事現場でのケンカが労働者災害補償保険法上の業務災害に該当するのか否かを判断するには業務災害とは何か。

これを明確にする必要がある。私が言いたいことはこうだ。

業務災害は業務上発生したことが必要である。業務上であるかどうかは「業務遂行性」と「業務起因性」の二つの要件により判断される。

それぞれの要件は何か。さらに解説する。

「業務遂行性」とは事業主の管理下にあるか支配下にあるかにより判断される。

一方「業務起因性」とは当該災害と業務との因果関係が問われることとなる。

作業中の災害は作業に通常伴う排便や飲水のための中断は含まれる。

しかし業務時間中に突然事業場に自動車が飛び込んできた場合や事業場内で狂人が刃物を振り回寸等の外部要因に係るものは該当しない。

イレギュラー事案はその都度判断することとなる。

ゆえに天災事変については大震災の際のように業務災害を被りやすい事情があれば認められる場合もあるだろう。

では休憩時間中の事故はどうか。

労働時間中であれば業務起因性が認められるものや事業場施設の欠陥不備に起因するものでないと認められない。

一方、事業場外や出張中の事故はどうか。

この時間は事業主の管理・監督下といえる。

出張それ自体が事業主の命令により行われるもである。

ゆえに目的を達成するための行動は事業主は包括的に負っているといえる。

睡眠や食事という本来の仕事とまったく関係のない私的行為をも含め出張中の時間が業務遂行性の範囲として認められる。

それゆえ宿泊施設で酔って階段から転倒したケースも認められたこと、出張先ホテルで就寝中に焼死した場合も業務起因性があるとされたこともある。

とはいえ個人的な遊興等の私的行為、通りすがりの人とのけんか等の恣意的行為による事故、業務逸脱行為による事故行為などは業務起因性はない。

「業務遂行性」と「業務起因性」のそれぞれの定義、ここは押さえておきたい。

「どうして?」と考える癖を習慣にする。喧嘩の原因は何か。

通常「仕事中のけんかが原因で起きた怪我、就業規則で禁止と定めた飲酒および酒気帯び中の作業での災害」、労災保険の適用は無理だ。

あなたはこう考えているだろう。

「そうなんだぁー、ケンカは労災じゃないのかぁー」

「結論はでたね」

「じゃぁーこの話はおしまい」

チョット待った!もう少し深く考えてほしい。

今回の喧嘩の原因は「仕事の進め方々意見の食い違いによる」だからだ。
「どうしてか?」と常に考えるべきだ。

ここで、ケンカでの怪我が「労災になった判例」と、「労災ならなかった判例」をそれぞれお伝えしょう。

倉敷労基署長事件(最高裁 昭49. 9. 2判決)

最初は「ケンカでの怪我が労災ではない」とされた判例だ。

仕事中の大工が就職を依頼にきた元同僚とけんか。従業員が殴打され死亡した事案である。

端的言えばこういうことだ。

被災者は加害者に対し暴言を発した。加えて相手の挑発に応じて嘲笑的な態度をとった。

つまりケンカの原因は「暴言」「嘲笑的な態度」だ。この行為は仕事には関係ない。

よって業務起因性が認められず労災ではない、とされた。

新潟労基署長(中野建設工業)事件(新潟地裁 平15. 7.25判決)

次は「ケンカでの怪我が労災になった」判例だ。

暴行が職場での業務遂行中に生じたなら当該暴行は労働者(被災者)の業務に内在または随伴する危険が現実化したものと評価できる。

よって暴行労働者との私的怨恨または労働者(被災者)による職務上の限度を超えた挑発的行為若しくは侮辱的行為等によって生じたものなら、当該暴行は業務に内在または随伴する危険が現実化したものだ。

したがって業務起因性を認めるのが相当とされ、労災である、とされた。

この2つの判例から、私が言いたいことはこうだ。

ケンカの原因が相手からの「暴言」「嘲笑的な態度」ならば、労災ではない。

一方「仕事の進め方々意見の食い違いによる」ケンカが原因ならば、労災である。

 

あなたが、他社より一歩先へ行く、考えの磨き方

最後に整理しよう。

今まで述べてきたとおり、けんかについては行政の労災認定は、非常に慎重である。

今回の事案は、社員同士が仕事に関する意見の違いから口論になり、結果殴り合いのけんかに発展し従業員が負傷をした。

このことから喧嘩の原因は、ズバリ!仕事上の意見の食い違いだ。

加えて特に挑発的または侮辱的言動の事実は述べられていない。

さらに休憩時間中の口論での喧嘩でない。

となれば事業主の支配下にある限り業務に付随する行為とみなすことが相当である。

就業時間中に発生しているものであれば業務上と認定される可能性が高い。

したがって労災の適用が受けられると考えられる。

最後までお読みいただきありがとうございました。

渋谷の社会保険労務士の高山英哲でした。
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